「(介護施設は)老人を引き受けるな」という妙な判決・・・
mixiで知ったニュースです。
「仙台市のショートステイ施設で平成18年、実母=当時(86)=が転倒して骨折したのは、施設側に過失があったためとして、次女と三女が同市の施設運営会社に660万円の損害賠償を求めた訴訟の判決が10日、仙台地裁で開かれた。安福達也裁判官は施設側に440万円の支払いを命じた。
安福裁判官は「(実母は)重度の認知症で、施設入所後も徘徊など問題行動を繰り返していた。転倒は十分予測可能で、介護員を増やすか家族に引き取りを要請すべきだった」とした。
判決によると、実母は当時、骨粗鬆症などで、18年10月から施設の利用を始めた。同月31日朝、居室クロゼット内の手の届かない場所にある荷物を取ろうとして転び、右足を骨折。後に呼吸困難のため、入院先で死亡した。(msn産経ニュース)」
とんでもない判決ですね。このニュースだけでは介護施設の対応が不十分だったかどうかは判断できませんが、認知症云々以前に、「老人は骨が脆く、転倒すれば骨折する可能性は高い」ことは間違いありませんし、足腰の衰えた老人であれば「転倒の可能性」は十分に予測できます。
介護員の増員については、介護保険制度内で行う以上、限度があります。介護者がマンツーマンで常時そばにいなければ、万一の転倒に対応することなど不可能ですよね。それでも万全ではありません。それに、そんなことをすれば拘束と言われかねません。
介護の現場では、「転倒による骨折」を怖れ、補助具の使用で歩ける人も「車いす」に乗せる事業者もあるようですが、この裁判官はそれを勧めるつもりなのでしょうか?
「家族に引き取りを要請すべき」というのも無茶苦茶です。介護サービスなど利用せずに済むのなら、お金を払ってまで利用しようという家族などいません。家族が介護することができないから、介護サービスを利用するのです。
それを「家族に返せ」ではそれこそ本末転倒です。判決が骨折していますね。
判決の主旨をさらに推し進めて考えれば「転倒が容易に予測できる場合は利用を断る」しかありませんが、それを言い換えると「足腰が丈夫で認知症もない元気な老人だけを引き受ける」ことになりますね。そんな施設にどのような意義があるのでしょう?少なくとも介護保険の利用対象者ではないことになるのですが・・・。
この(民事)裁判は、仙台地方裁判所という下級裁判所で行われたものですが、被告にはぜひ控訴して貰いたいと思います。
「(死亡に至る)事故を起こした施設」と「事故で家族を失った家族・親族」という当事者間(だけ)の民事裁判としては、当事者でもない私が口を挟むことはないのですが、「介護員を増やすか家族に引き取りを要請すべきだった」という一言が許せません。
裁判官の一言が、当事者間だけでなく、介護サービス事業者と介護家族という介護に関わる人たち全体の問題にしてしまったからです。
この判決が判例となるようでは、介護サービス自体が成り立ちませんし、在宅介護を担う介護家族にとっても、頼る先が無くなってしまうからです。
最後に、この裁判を起こしたのが「次女と三女」だという点も引っかかりました。
長女は原告に加わらなかったのでしょうか?
そもそも、裁判の論点は「施設内での転倒・骨折」であって、「(呼吸困難による)死亡」との因果関係には触れていません。
つまり、(結果的に)死亡したこととは関係なく、「転倒・骨折(させたこと)に対する損害賠償請求」なのです。
この記事だけでは長女がどのように介護に関わっていたのかも判りませんが、記者が「家族が~」と書かずに敢えて「次女と三女が~」という記述をしている点から、以下のような状況を思い浮かべました。
「主たる介護者は長女で、介護疲れからショートステイを利用していたが、次女や三女は(長女による)在宅介護だけを求め、ショートステイの利用には反対する「“避”介護親族」で、実母の事故についても長女は(施設の対応に)理解していたので原告には加わっていない」です。
一応、ネット上で裁判記録を探してみましたが、見つかりませんし、あくまでも憶測に過ぎないのですが、おそらく近い状況ではないでしょうか。
Comments
はじめまして。
虹の家 さんのブログから来ました。
自宅を使って10名定員の小規模なデイサービスをしています。
お話のあった方は、断らずになんとかいい居場所になるように・・と、思っています。
要支援1~介護度4の方まで・・
パーキンソン、認知症、リュウマチの方もいます。
10名定員なので、看護師は配置があればいいので、毎日はいません。
この裁判の判決を見ると、リスクの大きい方の受け入れは出来なくなりますね。
それでも、在宅でのご家族の介護の応援をしたいと思います。
ご家族とのコミュニケーションを大事にしていきたい・・と思いました。
ながながと、失礼しました。
ホント、この判決には納得できません。
「自立」と判定される老人ですら「転倒すれば骨折することは十分に予測できる」訳ですよね。
この裁判官の考え方に沿うなら、義母は引き受けて貰えるのかな?
何しろ、80歳でボーリング好き、行けば連続して数ゲームは投げるスーパー婆さんですから・・・。
それでも、昨年庭先で転倒し、骨折したぐらいですから、「転倒/骨折のリスクがない」とは言えません。